【情シス必見】ネットワークのブレーカー役?帯域制限機能とは?

はじめに:気づかれにくい「動画ならでは」のネットワーク負荷

普段、社内ネットワークを行き交うメールやチャット、基幹システムの通信量を、情報システム部門が細かく気にする機会は少ないかもしれません。

しかし、動画配信が始まると状況は一変します。動画は静止画やテキストと違い、再生している間ずっと大量のデータを流し続けます。そのため、社長メッセージなどの全社一斉配信をきっかけに、基幹システムの反応が遅くなったり、Web会議が途切れたりするといった、ネットワークのパンクにつながる相談が当社に寄せられることがあります。

本記事では、こうした動画配信ならではの帯域消費という観点を起点に、ネットワーク管理者が押さえておきたい考え方と、社内インフラを守るための対策の一つである帯域幅制限機能について解説します。

なぜ動画配信だけ特別なのか

動画配信が他のシステムと決定的に異なるのは通信量です。テキストベースの業務システムが送受信するデータ量と比べると映像データは桁違いに大きく、しかも視聴中はその帯域を使い続けることになります。

この問題は組織の規模が大きくなるほど顕在化しやすく、特に動画配信システムを導入する部門と社内ネットワークを運用管理する部門が別々になっている企業では、双方の連携が十分に取れないまま導入が進み、他部門への影響に気づくのが遅れてしまうケースも見られます。

当社でも、トラブルが起きてから対処するのではなく、導入前の段階で他システムに影響を与えない設計を求める企業の声が聞かれます。この場合、回線そのものを増強するという選択肢もありますが、拠点数や必要な帯域によっては億単位の投資が必要になり、現実的とは言えないケースもあります。そこで選択肢の一つとなるのが、動画配信側で通信量に上限を設ける方法です。

帯域幅制限機能とは

帯域幅制限機能とは、動画配信が消費する通信量にあらかじめ上限を設定する仕組みのことです。家庭用のブレーカーが許容量を超えた電流を検知して遮断し、家全体を守るのと近い発想だと捉えると、イメージしやすいかもしれません。

ただし、これは配信システム提供側が独自に開発した特別な技術というわけではなく、OSやミドルウェアが標準的に備えている機能を、お客様の環境に合わせてチューニングして提供しています。ベンダーによって実装状況は異なりますが、少なくとも当社の場合はこうした形で提供しています。

制御の単位はサーバー単位で設定され、上限に達しても、配信が完全に停止するわけではありません。画質が粗くなったり読み込みが遅くなったりする形で、動画側の通信だけが絞られる挙動になります。動画の視聴品質を多少犠牲にしてでも、他の業務システムへの影響を防ぐ、という考え方に基づいています。

なお、視聴者側の回線状況に応じて自動的に画質を切り替えるアダプティブビットレート(ABR)という技術もありますが、こちらは帯域幅制限機能とは別の独立した仕組みとして動作するため、両者が密接に連携しているわけではない点には注意しておきたいところです。

導入するとどうなるか

帯域幅制限機能は一度設定すると、その後は頻繁に見直すような性質のものではなく、ネットワークの構成が大きく変わらない限り、いわば保険のような形で運用され続けます。実際当社では、導入後に上限値の調整を求められることは多くありません。

上限値は、主に次のような手順で決めていきます。

  1. 拠点や社内で確保されている回線容量を把握する
  2. その中で、他の業務に影響が出ない範囲でどこまで動画配信に割り当てられるかを見積もる
  3. 配信時間の長さや、動きの多い映像かどうかといった配信内容の特性を踏まえて、具体的な数値を調整する

一方で、上限を厳しく設定しすぎると、画質の低下や再生の遅延が目立ちやすくなる点には注意が必要です。当社を含む実際の運用では、動画自体のビットレートを併せて調整することで、こうした影響を抑えながら上限値を設計しているケースが多いと思われます。

動画配信システムを選ぶ際に確認しておきたいポイント

動画配信システムを選定する際、帯域幅制限のような仕組みや付帯するサービスについては、比較検討の観点の一つになり得ます。特に次のような点は、事前に確認しておく価値があります。

  • 追加のネットワーク機器や個別の工事なしに、パッケージ導入の中で設定が完結するかどうか
  • 自社のネットワーク環境や拠点構成に応じて、個別にチューニングしてもらえるかどうか
  • 大規模な負荷分散の仕組み(エッジサーバなど)とあわせて、総合的にネットワークを守る設計ができるかどうか

また、制御アルゴリズムそのものの独自性よりも、拠点ごとのネットワーク状況に応じてどれだけきめ細かく調整・提案してもらえるかという運用面での対応力の方が、実務上は重要になってくるはずです。導入時にどこまで自社の環境をヒアリングしてもらえるかは、確認しておいて損はないでしょう。

まとめ:動画配信は「つながればいい」では済まされない

動画配信は、他の業務システムとは異なる特性を持つシステムであり、大量の帯域を消費するという特性を踏まえずに導入を進めてしまうと、意図せず他部門の業務に影響を与えてしまう可能性があります。

帯域幅制限機能は、そうしたリスクに備えるための選択肢の一つですが、単独の機能で万能というわけではなく、負荷分散の仕組みなど他の対策とあわせて検討することで、より安定したネットワーク運用につながっていきます。動画配信システムを選定する際は、表向きの機能や操作性だけにとらわれず、周辺システムへの配慮がどこまでなされているかも、あわせて確認してみてはいかがでしょうか。

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